パイプライン

GRN-1201

  1. がんを排除する免疫を患者体内で誘導する「がんペプチドワクチン」
  2. 欧米人に多い遺伝子型に対応するグローバル向けプロダクト候補
  3. 免疫チェックポイント阻害剤との併用による複合的がん免疫療法
  4. 米国で、メラノーマと非小細胞肺がんを対象に早期臨床試験を実施中
がん免疫療法同士の併用

図:がん免疫療法同士の併用

GRN-1201は、欧米人に多いA2型HLA(HLA-A2)に結合するペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとしたグローバル市場向けのがんペプチドワクチンです。現在米国においてメラノーマ(悪性黒色腫) を対象とするオープンラベル第Ⅰ相臨床試験と、非小細胞肺がんを対象に免疫チェックポイント阻害剤と併用する第Ⅱ相臨床試験が実施されています。

GRN-1201を構成する4種のペプチドは、ITK-1と同じく、久留米大学のcDNAライブラリーから多くの試験と時間をかけてスクリーニングされてきたもので、投与された患者の体内でがんを排除する免疫を効果的に誘導する能力の高いがん抗原ペプチドです。

がん抗原ペプチドは、がん細胞内でMHC(組織適合遺伝子複合体、ヒトの場合はHLAと呼ばれるので、以下「HLA」)と結合し複合体を形成して、がん細胞表面上に提示され、細胞傷害性T細胞はこの複合体を目印として認識します。HLAの型によってペプチド結合部位の形が異なり、ペプチドは特定の型のHLAにしか結合できません。GRN-1201は欧米人の5割(日本人の4割)を占めるA2型HLA(HLA-A2)に結合するペプチド4種で構成されます。ちなみに、ITK-1はA24型HLA(HLA-A24)に結合するペプチドで、HLA-A24をもつ日本人は6割いますが、欧米人では1-2割にとどまります。よってGRN-1201は、抗原の多くの患者に適用できる汎用性という点から、グローバルに展開が可能で、開発はすべて米国で行っています。

GRN-1201開発の特徴は、免疫チェックポイント阻害剤の併用による複合的がん免疫療法の開発であることです。

がんワクチンの戦略は、体内に注入したがんの断片によって免疫細胞に攻撃対象の「目印」を覚えこませ、がんを排除するものです。インフルエンザを始めとする多くの感染症では、ワクチン療法は多大な効用を発揮してきたためこの戦略は通用するはずですが、ウイルス(に感染した細胞)とがん細胞とでは前者が「非自己」であるのに対して、後者は「自己」であるという大きな違いがあり、この違いをがん細胞は巧みに利用して攻撃を回避しています。すなわち、免疫システムには誤って「自己」を攻撃したり、相手を殺傷したあとも無意味に攻撃し続けたりしないよう、頃合いを見てブレーキをかける仕組みが備わっています。がんワクチン療法が免疫によるがん排除能を高めるために“アクセルペダルを踏む”ことに対して、がん細胞は免疫抑制機構という“ブレーキペダルを踏む”ことでその攻撃を回避しています。免疫チェックポイント分子は、この免疫のブレーキペダルであり、がん細胞はこのブレーキペダルを踏むための分子を細胞表面上に出して、免疫細胞が攻撃しようと隣接してきたときに攻撃をストップさせるシグナルを出します。

がん免疫治療にパラダイムシフトをもたらしたと言われる免疫チェックポイント阻害剤は、このブレーキペダルを踏ませないよう間に割って入ってブロックするものであり、このブレーキ解除によってがんを排除するように誘導された免疫細胞は、ノンストップでがんを攻撃できるようになります。

一方で、そのような免疫チェックポイント阻害剤でも、単剤での奏効率は、がん種、ステージによって10-40%と言われていますが、逆を言えば60-90%の人には十分な治療効果を上げられていません。その理由の一つとして、効果がみられない患者においてはがん排除能の高い免疫誘導が不十分、すなわち“アクセルを踏む”ための免疫原性の高いがん抗原の供給が不足しているからではないかと考えられています。免疫チェックポイント阻害剤が効果を上げるためには、その作用機序からも明らかなように、がんに特徴的な高い免疫抑制圧力がかかった腫瘍組織に、T細胞が浸潤しがん細胞に作用できる状態をいかに作るかにかかっています。

その課題を解決するために、GRN-1201ペプチドワクチンがT細胞を効果的にがん攻撃へと誘導する目印(抗原)として適格であることを証明するため、抗原による“アクセル”と免疫チェックポイン阻害剤による“ブレーキ解除”の相乗効果によって、今まで治療効果を得られなかった患者で治療効果を得られるようになることを開発目標として、現在非小細胞肺がんを対象とする免疫チェックポイント阻害剤併用第Ⅱ相臨床試験を実施しています。

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