パイプライン

GRN-1301

  1. ネオアンチゲン(腫瘍特異的変異抗原)を標的とする「がんペプチドワクチン」
  2. 非小細胞肺がん治療における分子標的薬の薬剤耐性の課題をがん免疫療法で解決
図:抗原ががん細胞表面に現れるまで

図:がん細胞表面にペプチド抗原が現れるまで

図:ネオアンチゲン(がん特異的遺伝子変異由来の抗原)

図:ネオアンチゲン(がん特異的遺伝子変異由来抗原)

GRN-1301は、遺伝子異常の蓄積により起きる「がん」において、特に非小細胞肺がんの悪性化に直接関わる遺伝子変異(T790M点突然変異)によって生じる変異遺伝子産物をターゲットとするがんペプチドワクチンです。GRN-1201と同じく欧米人に多い(欧米人の5割、日本人の4割)HLA-A2拘束性ペプチドで、国内での第Ⅰ相臨床試験を2018年度に開始し、グローバルでの開発に展開してゆく予定です。

遺伝子の突然変異によって生じる抗原はネオアンチゲン(Neoantigen)と呼ばれ、がん細胞でしか発現しないため、非自己を排除する免疫システムにとって格好の標的となります。高い免疫原性を持つネオアンチゲンをワクチンとして用いることで、患者自身の免疫システムに強力ながん排除能を与えるだけでなく、特にがんの悪性化に直接関与する遺伝子変異(ドライバー変異)を標的とすればがん細胞での抗原喪失による免疫監視機構からの逃避も起こりにくく、より高い臨床効果が期待されます。

非小細胞肺がん患者の約 1 割(日本人では 3 割)で EGFR(上皮成長因子受容体)活性化1次変異が生じていますが、そのような患者の第1選択治療としてEGFR チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI、gefitinibやerlotinib)が広く用いられています。しかし治療を続けるうちに、およそ6 割の患者にEGFR-T790M 点突然変異(2次変異と呼ばれ、EGFRタンパク質の790番目のアミノ酸がトレオニン(T)からメチオニン(M)へ置換されたもの)という薬剤耐性変異が生じ、それらのEGFR-TKIは効かなくなってしまいます。GRN-1301 はEGFR-T790M変異遺伝子産物に由来するネオアンチゲン・ペプチドワクチンで、EGFR-TKI への耐性を獲得したがん細胞を攻撃することでがんの増悪を防ぎます。EGFR-TKI治療を受けたがん細胞が生き残りをかけて遺伝子変異を進めた、あるいは遺伝子変異が進んだものが生き残った結果とも言えるEGFR-T790M 点突然変異は、EGFR-TKI治療を受け続ける限り発生する遺伝子変異であることから、抗原喪失も起こりにくいと考えられます。

EGFR-T790M点突然変異に対応するチロシンキナーゼ阻害薬が近年上市されており、その臨床有効性からブロックバスター化が予想され後続品も開発されているなど、EGFR-T790M点突然変異に対応する薬剤は今後世界の肺がん治療の大きな一画を占めていくことが想定されます。当社は、これらの低分子化合物とは作用メカニズムの異なる差別化された製品と位置づけて、がんワクチンの開発を行います。

当社は、神奈川県立がんセンターとの間で、ネオアンチゲンの探索に関する共同研究を2016年7月より 実施しており、がん微小環境における抗原提示のメカニズムに着目しながら、ドライバー変異抗原のみならず、免疫原性の高さと数の多さが期待されるパッセンジャー変異 (がん化には直接関与しないが、がん細胞が特異的に持つためがん細胞の目印となる変異)抗原の同定法について も研究を進めております。

なぜネオアンチゲンが注目されるのか

近年の次世代シークエンサー(NGS)の発達により、がん細胞特異的に蓄積される遺伝子変異も、患者個人のレベルでの解析が可能になりました。免疫チェックポイント阻害剤の有効例と無効例を比較検討した研究において、有効例ではがんに突然変異による遺伝子変異が多いことが示唆されています。最近では、体内でのネオアンチゲンの生成につながる遺伝子不安定性とDNA修復遺伝子異常がある患者に対する免疫チェックポイント抗体治療が米国で承認され、がん種/臓器を問わず承認された史上初めての事例となっています。がん免疫は、免疫チェックポイント阻害剤でブレーキを解除しただけでは成立せず、T細胞を始めとする免疫細胞ががん排除のためにがんと直接対峙する必要があり、そのT細胞ががん組織に入り込んでいくのは、最初に抗原による誘導があるからです。突然変異による遺伝子変異産物に由来する抗原(ネオアンチゲン)は、いわゆる「非自己」抗原であるため、強い免疫原性を有し、有効ながん免疫応答の誘導に重要な役割を担っていることが考えられます。
遺伝子変異は、がん患者個別の変異であり千差万別なので、その多様性に対応していくことは個々の患者の体質・病気の特徴に合った治療を意味する個別化療法に繋がっていきます。この未来の医療の実現に向けて、既に欧米では、患者ごとに異なる遺伝子変異から、遺伝子解析技術を駆使してがん排除能の高いネオアンチゲンを予測し、患者ごとに異なるワクチンを都度調整して投与する完全個別化ワクチン療法に関する臨床試験が行われています。さらにはネオアンチゲンを認識するT細胞のTCR(T細胞受容体)を遺伝子導入することによって、ネオアンチゲンを標的とする患者個別の遺伝子改変T細胞療法(TCR-T)の開発も進められています。

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