パイプライン

iPS-T

  1. iPS-T細胞療法
  2. iPS細胞のがん免疫療法分野における世界初の臨床応用
iPS-T細胞療法(自家)
iPS-T細胞療法(他家)

中内啓光東京大学医科学研究所教授兼スタンフォード大学教授等による発明をもとに、iPS技術を利用した再生医療のがん免疫療法分野への世界初の応用を目指し研究開発を行っています。

がん免疫は細胞傷害性T細胞ががん局所の腫瘍組織に浸潤することが成立の要件となりますが、がんワクチンが患者体内で自らの免疫システムにまかせてT細胞をがん排除へと誘導するがんの目印(抗原)を投与するものであるのに対し、体外に一旦取り出したT細胞に遺伝子改変によってがん排除能を付加しその改変T細胞そのものを投与するのがT細胞療法です。

そのT細胞療法の数あるプラットフォームの中で、iPS技術を用いて、免疫抑制機構に暴露して弱ってしまったがん排除能の回復と、iPS細胞の無限の増殖能を活かしたT細胞量産化を可能にするのが、iPS-T細胞療法(iPS-T)です。

がん免疫療法が治療効果を出すためには、患者の体内で腫瘍組織に浸潤したT細胞が、がんを排除しきるまでノンストップでがん細胞を攻撃し続ける必要があります。しかし、がん排除のために腫瘍組織へ浸潤し様々な免疫抑制機構にさらされてきた抗原特異的T細胞は、免疫抑制がかかってがん排除能を弱められた「T細胞疲弊」状態となることが、がん免疫療法の課題の一つとなっています。

iPS-Tは、そのような「疲弊」状態にあり血中を流れているがん抗原特異的T細胞を一旦体外に出し、iPS技術を用いてリプログラミング(初期化)し(T-iPS細胞)、そのT-iPS細胞を分化誘導して元のT細胞の若返った状態へと再生してから、再びがん排除のために体内へ送り込みます。

これまでで最も明瞭な成功を示しつつあるT細胞医薬は、リンパ腫等の血液がんを対象に顕著な臨床試験成績を示しているCD19標的CAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法)ですが、TCR-T(T細胞受容体遺伝子導入T細胞療法)とともに、患者の血液を採取してリンパ球(T細胞が含まれる)を取り出して、遺伝子操作を加えてがん細胞を認識し排除するようT細胞を改変して患者体内に戻す療法です。これらは、がん患者本人から採取できるリンパ球の量と質次第では適用が制限されるという課題があります。iPS-T療法の場合は、少ない採取量からも、iPS細胞へ初期化した段階(T-iPS細胞)でほぼ無限に増やせるので、そこから順次T細胞を分化誘導させれば、「若返った」T細胞を必要なだけ患者に供することが可能になります。

出発点として、血液がんの一つであるEBウイルス由来のリンパ腫を対象とし、EBウイルスがもつ遺伝子を標的とするiPS-T細胞の臨床応用を想定しており、現在東京大学医科学研究所、順天堂大学病院とともに、共同研究を進めています。

現在T細胞療法の中で最も実用化に近いところまで来ているのは、血液がんを対象とするCAR-T細胞療法ですが、次のターゲットとして、固形がんへの領域拡大と、必要とされるときに即時に均質な細胞製剤を提供できる他家(“off-the-shelf”)製剤の開発へと目が向けられています。これらの次世代の細胞療法開発において、iPS-Tは、その特性から優位なポジションにつく展開が可能なプラットフォームです。

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