パイプライン

ITK-1

  1. がんを排除する免疫を患者体内で誘導する「がんペプチドワクチン」
  2. 患者一人ひとりの免疫状態に合わせて効果的にがん免疫を誘導する抗原ペプチドを選択投与
  3. 国内で前立腺がんを対象とする第Ⅲ相試験を実施中(患者登録終了)
  4. 富士フイルム株式会社へライセンス・アウト
がんペプチドワクチンが投与され、がん細胞を殺傷するまでの流れ

図:がんペプチドワクチンが投与され、がん細胞を殺傷するまでの流れ

リード開発品のがんペプチドワクチンITK-1は、富士フイルム株式会社へ導出しており、現在日本国内において進行性の去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とするプラセボ対照第Ⅲ相二重盲検比較試験が実施されています。2018年度中に試験結果が出る予定です。

がんペプチドワクチンが作用する仕組みは、がんの目印となるがん抗原ペプチド(9-10のアミノ酸残基)を合成して患者に投与すると、患者の体内で、がん排除の実行部隊である細胞傷害性T細胞(リンパ球の一種で、かつてキラーT細胞と呼ばれたもの)がそれを受けて同じ目印を他所で見つけたときに攻撃するよう準備を整えて(活性化し)巡回し、実際にがん細胞の中で作られ表面上に出てきたがんの目印(投与したものと同じアミノ酸配列のペプチド)を見つけたときにその目印をたよりにがん細胞を殺傷するものです。

目印が目印たる所以が、他と見分けがつくこと、途中で無くならないことであるように、理想的ながん抗原ペプチドは、がん患者の体内で本来「自己」であるはずのがん細胞を排除する免疫を誘導でき(免疫原性)、がん細胞だけを攻撃できるようがん細胞だけに発現し(組織特異性)、免疫による攻撃からの逃避(免疫逃避)を起こさないというところにあります。

ITK-1を構成する12種の抗原ペプチドは、元は、日本の久留米大学において、患者のがん細胞内にある遺伝子情報ライブラリー(cDNAライブラリー)に由来します。それらは、がん患者の細胞傷害性T細胞が反応した数百の候補の内、10年以上の歳月をかけて実行された何千もの試験管内および臨床研究での、免疫原性と組織特異性そして多くの患者に適用できるかという汎用性によるスクリーニングを経て、絞り込まれたものです。

さらに、ITK-1が他のがんワクチンと一線を画する特徴として、その投与方法があります。がん患者の免疫状態は一人ひとり異なり、誰が何に免疫反応するかも多様性に富んでいます。がん治療が個別化・複合化へ向かう中、がんペプチドワクチンも、治療効果を引き出すために、患者の免疫反応の多様性に対応できるものである必要があります。そこで、ITK-1では、予め用意した12種のがん抗原ペプチドの中から、投与前の患者の末梢血を用いた免疫検査によって、各患者に最適な抗原ペプチドを選択して投与する方法をとっています。この方法を「テーラーメイド型」がんペプチドワクチンと命名しており、患者にワクチン投与する前に、当社独自のバイオマーカーで既存の免疫応答(免疫監視機構において、“特定のペプチドをがんの目印としてがんを排除した経験のある細胞傷害性T細胞”=“免疫メモリー”)の有無を確認し、がん排除記憶のある細胞傷害性T細胞を活性化させるペプチドを投与します。それによって、より強い抗腫瘍免疫をより早期に誘導でき(2次免疫誘導)、より高い臨床効果へ結びつくという考え方に基づいています。がん免疫療法の課題の1つは、がんを排除する細胞傷害性T細胞が誘導されて(免疫応答)から、実際にがん細胞を攻撃・殺傷し、それが臨床効果として現れるまでに比較的時間がかかることと言われています。ITK-1はバイオマーカーと組み合わせて2次免疫からの誘導を図る独自の投与方法によって、このタイムラグを克服することを考えています。

さらに、当社は複数のペプチド抗原を同時に投与します。もともと遺伝子が不安定で無秩序な異常増殖をしているがん細胞は、免疫系の攻撃を回避するためにがん抗原提示に関わる特定の遺伝子発現を変化させて(免疫編集)攻撃の目印の発現を低下させたり消失させたりすることがあります。これは、様々あるがんの「免疫逃避」の一つです。1つのペプチド抗原投与だと、初めは効果があっても、がん細胞の遺伝子変異により、すぐに効果がなくなる可能性があります。複数の抗原投与なら、がん細胞の遺伝子変異が追いつかず、この免疫逃避を回避できる可能性が高くなります。

閉じる