テクノロジー

今後の展開

免疫チェックポイント阻害剤が示した臨床試験の成果は、外科手術・放射線療法・化学療法に続くがん治療の新しい選択肢、「第4の治療法」としてのがん免疫療法の道を拓きました。抗腫瘍免疫を活性化させるためにアクセルを踏むという従来追い求めてきた発想ではなく、がん免疫のブレーキを解除するという発想が、パラダイムシフトを起こしたと言えます。

免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験は、今でも他剤との併用試験を含め800本以上が実施されており、次世代シーケンサーの登場によりがん細胞の遺伝子の状態を解析できるようになったことと相まって、これらの臨床試験の総合的な解析が、がんの病態や患者の免疫状態と治療効果の関係の解明を後押ししています。免疫チェックポイント阻害剤が単剤で効く患者は、がん種やステージによって10-40%であり、現在、それ以外の効果が見られない60-90%の患者に対しても治療効果を得る方法を見出す試みがなされています。

がん免疫療法の課題は、今も同じで、個々の患者におけるがんの個別性や免疫応答の多様性にどう対応していくか、誰にどのように投与すれば効くかを明らかにしていくことあると言っても過言ではありません。がん免疫療法も「個別化医療」という大きな流れに乗っていることを意味し、治療効果の期待できる患者を高精度で予測するためのバイオマーカーの同定や、免疫療法同士を組み合わせることによって患者にとっての治療の選択肢を増やすこと、また、そのままでは治療効果が期待できない患者を効果が出るように変える方法なども含めた開発が進められています。

そこでは、免疫のアクセルを踏むのと同時にブレーキをはずしたり(がんワクチンとの併用)、アクセルはそのままにして複数のブレーキを同時に解除する(他の免疫調整因子抗体との併用)など、がんの病態や患者の免疫状態に合わせてがん免疫療法を複合的に組み合わせることによって、がん免疫が機能するのに不可欠な抗腫瘍免疫を活性化する方法、すなわちアクセルをより効果的に踏む方法の探索がなされています。

この個別化医療に対応するための方法としての「統合的ながん免疫療法のアプローチ」は、大きな流れの一つであり、これが当社が複数のがん免疫療法のテーマ、複数の分子形態(モダリティ)にまたがる開発を手がける理由です。 そして、ここに来てさらに、当社が「グリーンペプタイド」として設立された2003年から一貫して開発に取り組んできたリード開発品ITK-1に体現される「個別化医療」の流れは、大きな進化を遂げる兆しが出てきています。

遺伝子解析技術の進展に伴い可能になってきた個別化医療の究極の姿として、患者ごとに異なるがん細胞の遺伝子変異から、がん排除性の高い抗原(がんの目印)としてネオアンチゲンを同定し、患者ごとに異なるワクチンを調整・投与する個別化がん免疫療法です。近年の免疫チェックポイント阻害剤の有効例と無効例を比較検討する研究により、有効例ではがんに突然変異による遺伝子変異が多いことが示されました。この突然変異による遺伝子変異産物に由来する抗原(ネオアンチゲン)は、がんでないときには存在せず、がんになったときにだけ存在するため、免疫の排除対象となる「非自己」であり、強い免疫応答を誘導すると考えられています。この個別化がん免疫療法は手のかかる解析が基になっており、医療現場において迅速かつコストに見合う形で提供できるかどうかは今後の課題ではあるものの、米国ではすでにバイオベンチャーを中心に続々と治験が始められており、大手製薬企業もそのようなバイオベンチャーとの提携を強めています。

免疫チェックポイント阻害剤の登場以降、がん治療革新の機運が高まる中で、当社は統合的アプローチと個別化医療という大きな方向性に沿ったがん免疫療法を開発してまいります。

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