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BP2301に関する非臨床研究データー第38回米国がん免疫療法学会(1)

先日開催された2023年度米国がん免疫療法学会(SITC2023)で、自家HER2標的CAR-T細胞療法BP2301の追加非臨床データについて発表しました。

-BP2301について

BP2301は、がん患者さんから採血して取り出した血液の中に存在するT細胞に、がん細胞殺傷能力を高めるためにがん細胞を認識するセンサー(キメラ抗原受容体(CAR)を組み込み、同じがん患者に戻すがん治療薬です。そのセンサーが認識するがんの目印が、HER2という、がん細胞表面上に発現しているタンパク質です。

-発表のポイント

昨年の別の学会では、BP2301は、HER2を発現するヒト骨軟部肉腫及び婦人科がん細胞移植マウス・モデルで、すべてのマウスのがんを退縮・排除し、かつその後もマウス体内に居続け、再移植したがん細胞を直ちにすべて殺傷するという強力な抗腫瘍効果を示したことを報告しました。
今回の学会では、前回のマウス試験で用いたヒトがん細胞株よりもずっとHER2の発現が低く、よってCAR-Tや抗体から見つけられにくいがん細胞株を使って、あらためてBP2301の抗腫瘍効果の強さを確認したことを報告しました。
今回用いた胆管がん患者由来のがん細胞株はHER2の発現が低く、承認薬であるHER2標的抗体トラスツズマブ(ハーセプチン)やトラスツズマブにチューブリン重合阻害剤DM1が結合したT-DM1(エンハーツ)では殺傷できない特徴がありました。このようながん細胞に対しても、BP2301はより少ないがん細胞表面上の目印でも認識し、抗腫瘍効果を発揮できたことから、あらためてBP2301の抗腫瘍活性の高さが確認されました。
また今回は、マウス試験で示された腫瘍退縮が、間違いなくCAR-Tによってもたらされたものであることを裏付けるデータを加えました。BP2301の投与により腫瘍が完全に退縮したマウスでは、血液中にCAR-T細胞が残存し、そのようなマウスでのみ、再度がん細胞を移植しなおしたときに直ちに全滅させることが確認されました。さらに、腫瘍を完全退縮できなかったマウスにおいても、形成された腫瘍内に、血管から投与されたCAR-T細胞が到達・侵入してがん細胞に対峙したうえで増殖し、抗腫瘍効果を発揮している痕跡を確認できました。

-今後の展望

現在、BP2301AYA世代(思春期・若年成人)における骨軟部肉腫、または女性における婦人科がん(卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん等)を対象に医師主導治験が行われています。

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