パイプライン

BP2301

  1. 固形がん(骨肉腫)対象、自家CAR-T療法
  2. 非ウイルス遺伝子導入法により、簡易かつ安全で持続的な作用

1.構造と作用機序

キメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)は、抗体のバインダー部位とT細胞活性化レセプター(TCR)の細胞傷害性部分である細胞内ドメインを、遺伝子組み換え技術を用いて結合させた受容体です。そして、このCAR遺伝子を遺伝子導入技術で導入したものがCAR-T細胞です。
バインダー部位はがん特異的なモノクローナル抗体可変領域のVH鎖とVL鎖を直列でつないだ単鎖抗体の構造をとっており、CAR-T細胞は、まずこの部位で腫瘍抗原を特異的に認識します。次いで、シグナル伝達ドメインを介して自ら活性化し、細胞質内に蓄えられたパーフォリン・グランザイムなどの細胞傷害性タンパクを放出することで、がん細胞の細胞死が誘導されます。

図

2.治療の流れ

① 患者の末梢血から白血球を採取
② そのうちのT細胞に、非ウイルス遺伝子導入法(PiggyBac法)でCAR遺伝子を導入
③ 拡大培養
④ 患者に静脈内投与
⑤ 患者体内で自己増殖すると同時に、がんを攻撃

図

3.特徴

BP2301は、信州大学小児学教室の中沢洋三教授及び京都府立医科大学小児科の柳生茂希助教らが製法を確立したHER2抗原を認識するHER2-CAR-T細胞を治験薬として、固形がん(骨肉腫)を対象とする医師主導治験を2020年度内に開始する想定で準備を進めています。
これまでのCAR-T療法の多くはウイルスをベクターとして遺伝子導入していましたが、この方法では細胞が数日から数週間程度で疲弊してしまい、治療効果の持続性の観点から、免疫細胞に抑制がかかる固形がんへの適応に課題がありました。これに対し中沢洋三教授らの非ウイルス遺伝子導入法と、共同で創製したCAR-T細胞培養法(特許共同出願中)により作製したCAR-T細胞は、従来のT細胞よりも長期生存が可能なメモリーフェノタイプが多く含まれるT細胞(TSCM/TCM)を使用することが可能になります。メモリーフェノタイプのT細胞には幹細胞性があり、抗原刺激によってエフェクター細胞に分化します。このようなメモリーT細胞リッチなポピュレーションにより、投与されたCAR-T細胞が体内で継続的に増殖し、より持続的な抗腫瘍効果が期待されます。

T細胞の分化段階と機能の関係

TSCM:Stem Cell Memory T cell
TCM: Central Memory T cell
TEM: Effector Memory T cell
TEFF: Effector T cell
図:T細胞の分化段階と機能の関係

BP-2301のT細胞プロファイル

図:BP2301のT細胞プロファイル

また、ウイルスベクターによる遺伝子導入は効率的であるものの、臨床応用には高規格な製造設備と膨大な安全性試験を必要とします。一方、非ウイルス遺伝子導入法によって遺伝子導入されたCAR-T細胞は、ウイルスによって遺伝子導入されたCAR-T細胞と同等の抗腫瘍効果を示すと同時に、設備や操作が簡便であるという利点があります。

・第23回日本がん免疫学会総会(2019.8.21-23)
信州大学 医学部小児医学教室 中沢洋三教授
演題:PiggyBacトランスポゾンを用いた非ウイルス 遺伝子改変CAR-T療法の開発発表資料(抜粋)

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